江津市渡津町から9号線を少し走ったところにある江津の小さな港。その近くに真和漁業生産組合という会社がある。全国的にも知られていない島根。
漁港としてもまったく有名ではないこの江津の企業に、全国から漁業関係者や商社、飲食業の関係者が頻繁に研修や視察、相談に訪れている。真和漁業生産組合とは、どんな会社なのだろうか?
『関アジ』より高い『真和ブランド』のアジ-【真和漁業生産組合】
皆さんは、「関アジ」というブランドアジをご存知だろうか?プランクトンが豊富な豊予海峡で伝統の一本釣りで漁獲され、大分県の佐賀関で水揚げされるアジは、身が引き締まっており大型で、傷も少なく、出荷の際は活けじめを施されるので鮮度も抜群。「関サバ」とともに 水産品として全国初の商標登録もとったほどのブランドだ。
日本で最も有名な市場は東京の築地市場だが、築地や関西市場でその「関アジ」よりも高値で取引されることのあるアジがある。そのアジとは、驚くことに地名も港もまったく有名でないこの江津市沖で漁獲した真和漁業のアジだ。
やり続けた日本一の鮮度維持-【真和漁業生産組合】
関アジより高く取引される『真和ブランド』の命は魚の鮮度にある。市場で一番の値をつけられたのもこの鮮度があってこそだ。真和漁業の船は、「第28真和丸」。排水量19tクラスと定置網漁船では日本一大きいクラスだ。
装備している設備も選別機をはじめ最新鋭のものを取り付けている。
地元には、携帯電話のCMで有名になったシロイルカがいるアクアスという水族館があるが、この水族館の6割は真和漁業が水揚げし、生きたままもってかえった魚だ。エイやサメ、ウミガメなど大型の生き物まで生きたまま持ち帰られる唯一の大型の水槽と設備をもつ船が「第28真和丸」である。この江津という小さな漁港でこれほどまでに大きな船と最新の設備を入れた理由は一つ。
全ては「鮮度保持」のため。
大きな第28真和丸の船倉は5つにわかれており、
水揚げされた魚は瞬時に選別機を通して大きさごとに各船倉に入れられる。生かしておく「いけす」だけでなく、最も注意をしているのが氷で活き締めにする船倉だ。真和漁業では、通常の2倍〜3倍の氷を使用して活き締めにする。
「氷をけちって魚が活きているか死んでいるかわからない状態では意味が無い」と
福島専務は言う。真和漁業では、水揚げ⇒瞬時に選別⇒瞬時に活き締めするという工程で
最高の鮮度を作りだしている。魚は、消費者に届くまでの間、多くの人の手が加えられる。福島専務は、自分達の作業を「水氷で魚を作る」と表現する。最高の魚を自らの手で作り出すのだ。
いつでも見学に来てください。-【真和漁業生産組合】
日本一の値をつけた鍵となる真和漁業の鮮度保持。
「知りたかったらいつでも見に来てください。いくらでもお教えします。」と技術を隠すそぶりもない。
真和漁業には、アジが築地市場で良い値をつけるようになってから
「うちも鮮度を上げて少しでも高値で売りたい!」と
同業者が鮮度保持の技術を学びにくるようになった。京都、茨城、長崎、高知など全国から視察にこられ、例えば、鮮度の問題で悩んでいた高知県では、鮮度技術の向上のために真和漁業の鮮度保持を教本ビデオにしたほどだった。
数多くの同業者が学びにきたが、やり続けるところはほとんどないという。
ひとつは、やはり手間とコストがかるという点、もう一つは、鮮度があがったからといってすぐに魚の値があがるわけはなく、なかなか評価されないからだ。
「10年以上続けてようやく評価されるもんだ」、「教えるのはかまわないけど、
すぐに値がつかないからとやめられるのが悔しい」と福島専務は語る。
日本一への挑戦と苦難の日々-【真和漁業生産組合】
コストと手間をかければ誰でもできる鮮度保持。しかし、それを評価され、魚の値があがるには時間がかかる。真和漁業にも苦労は数え切れないほどあった。
例えば、地元の仲卸との喧嘩だ。いくら新鮮な魚をつくりあげ評価されはじめても値がまったく変わらない。真和漁業は、直接、中央市場に持ち込み自社ブランドを試しはじめた。しかし、この行為は仲卸の立場からすると許されるものではない。地元で魚が卸せなくなった。流通に使うトラックも全ておさえられ、自分達で全てをするしか方法がなくなった。「漁から帰ったその足で自社のトラックに乗って築地や九州まで運んだもんよ」と遠い目をしながら福島専務は笑う。
地元で卸せないということは、不漁の時もつらい。ある程度数が揃えば中央市場にもっていけるが、少ないと取引されない。こんな時でも地元の卸であれば少量でも扱ってくれる。それに、支払もまとめてされるので入金の心配もない。
そんな協力がない状態で孤軍奮闘は続いた。
「よく中央で勝負しようとしましたね!」と聞くと「先代が凄かったんだろうねぇ!」と笑った。こんな状況の中でも自社の鮮度技術を信じ、時には更なる鮮度を求められ改良を続けた。長い時間をかけて、ついに真和漁業のアジに関アジをこえる値がついた。
築地など市場では、今日一番の値の魚をどこの船があげたがすぐにわかる。
「そっちで真和の魚が手に入らないか?」中央市場の業者から地方の仲卸にも真和漁業の逆指名が入るようになった。ようやく、地元でも自分達が納得できる値で取引されるようになった。
更なる技術への挑戦-【真和漁業生産組合】
「一年中新鮮なアジを出したいね」と福島専務は語る。
最新の冷凍技術を取り入れれば、旬のアジがたくさん獲れる時期に漁獲し、その時に冷凍保存をすることができる。冷凍庫から取り出せば年中いつでも最高に美味しいアジの刺身が食べられるのだ。真和漁業は常に新たな挑戦を続けている。最近では商社とジョイントし、国内の食糧需給率をUPしようと政府レベルの課題を民間会社の立場で考えている。
現在、アジは鮮魚としての基準は80g以上。それ以下だと養殖魚のえさや肥料にされる。当然扱いもよくなく、鮮度も悪い。この小アジの鮮度を抜群のものにして、例えば弁当のアジフライやレストランのメニューに使えるようにすることを試みている。これができれば、今まで食用につかわれていなかった資源を活用でき、国内産の魚の供給率をあげることができる。
安心・安全を求める消費者のニーズに敏感な企業が増えてきた今、旬や品質が良いもの、新鮮なものはいくらでもニーズがある。バイヤーたちのモニタリングの評価も上々だ。
真和漁業の新しい挑戦はこれらも続く!
真和漁業生産組合で働きませんか?
「元々漁師」はほとんどいない。好きなら来ればいい!
真和漁業は活気に満ちた職場だ。しかも、そのほとんどの人が元漁師ではない。
「やってみて好きならくればいいよ。あわなければやめりゃいい。」と福島専務はいう。
真和漁業には、この生活が好きな男たちが集まっている。昔、漁の体験で真和漁業の船にのったらたまたま大きなマグロが大漁にとれたことがあった。船に乗っていた体験者がその興奮を忘れられず、少しして「あの興奮が忘れない!店をやめたから雇ってください!」と直談判に来たという話がある。その方は今でも現役の漁師として真和漁業で網をひいている。楽しいからこの仕事をしているという方でいっぱいだ。
20代〜60代の幅広い年齢層!
真和漁業では、地元の浜田水産高校のインターン生を受け入れするなどをしているため、働き手も若い層が多い。
20代〜40代が3人ずつ、50代が2人、60代が1人と様々な年齢層で構成され、いつもにぎやかだ。
体験・見学はいつでもOK!
真和漁業では、職場体験は事前に連絡をして頂ければ、いつでもOkだとのこと。
浜田水産高校のインターン以外にも、「海が好きだからのせて下さい」と毎週のように一緒に漁に出ていた中学校の生徒もいるくらいだ。実際に漁がやれるかどうか、楽しいかどうか、真和漁業の鮮度技術を見たいなど、体験・見学したい方は是非、ご連絡を頂きたい。
午後3時から始まる小遣い稼ぎ
午後3時に仕事が終わり、若い漁師さんが素もぐりの準備をしている。何をするのか聞いたら、これから年上の同僚の方とサザエやあわびを獲りにいくそうだ。
組合員なので獲ってもいいし、市場に売ることもできる。
季節によって変動するが、この副収入が月に10万にもなるので驚きだ。
「午後3時に仕事が終わって、ちょっと小遣い稼ぎも出来る。子供と遊ぶことも出来るし、こんな生活が好きならいい生活じゃないかな?」と福島さんは笑っていた。

